ネイタルチャートは動いている

突然ですが、「モナ・リザの微笑」という絵、ご存知でしょうか?
そう、レオナルド・ダ・ヴィンチの、あの絵です。

この絵を観察するとき、まず全体を見て「黒っぽい服の女性が屋外らしき場所にいるな」と判断し、次に「手は右手が左手に重なっていて」「何かベールのようなものが髪に掛かっている」「眉毛はなし」「アクセサリーもなし」といったように、細部を見ていく人が多いかと思います。
そして、こういった静止画を見るように、ホロスコープ、特にネイタルチャートを見ている人も多いはずです。

考えてみると当たり前ですが、あなたのネイタルチャートは刻々と移り変わる天空の「ある一瞬」を切り取ったものです。
それが「あなたが生まれた時」であるわけですが、それはあたかも流れる風景を切り取った「写真(静止画)」のようなもの。
しかし、実際の天空は刻々と移り変わり、天体はほとんど止まることがありません。
私たちの人生は生まれた瞬間のネイタルチャートに象徴されるとはいえ、私たちが「誕生」の瞬間を通過したのちは、絶えず成長し、いずれは老いて死んでいくという「変化」を経験し続けるように、天空の星もまた、絶えず動き続けています。
恥ずかしながら、私はプロになってしばらく経つまで、そのことをきちんと理解できていませんでした。

ネイタルチャートに表示されていることは、確かにあなたの人生を象徴しているものです。例えばあなたのネイタルの太陽が、金星と正確なコンジャンクションだったら、あなたは幸運な人なのかもしれません。
しかし、その幸運の内容がどのようなものなのかは、実際に経験してみるまではわかりません。その「経験」を表示しているのが、いわゆる「進運」と呼ばれるものです。

進運は、ディレクションと呼ばれることもありますが、私は「プログレス(セカンダリー・ディレクション)」という技法を採用しています。この技法の詳細はここでは解説しませんが、この方法を用いると、あなたの生後3ヶ月ほどの間にどのように天体が動くかで、あなたの人生の「山」や「谷」がある程度予測できます。

さて、「星は常に動いている」ということを踏まえた上でネイタルチャートに戻ってみると、今まで1枚の静止画として見えていたホロスコープが、突然アニメーションのような動きを伴ったもののように見えてきます。
太陽と月、それからアングルは逆行することはありませんが、それ以外の天体は全て逆行しますので、それぞれの天体が今どこにいて、どこに向かおうとしているのか、動きは遅いのか、それとも速いのかで、その天体の「意思」や「目的」が見えてくるのです。
これは非常に興味深いことで、それが腑に落ちた瞬間、私はさらに占星術の面白さに引き込まれました。そして同時に、今までどれだけ表面的なことだけしか見ていなかったんだろうと、激しく自分のアホさと至らなさに憤慨した瞬間でもありました。

しかし、占星術を学ぶ多くの人が、かつての私のように、ネイタルチャートを「静止画のように」見ているはずです。
ネイタルチャートは、「スタートの瞬間」であり、それがどのように動いていくか、その後が大事なのです。

占星術は奥深く、最初の用語等を覚えることで挫折する方も多いでしょう。
ご自分のネイタルチャートを見て、「わからん」と思ったら、次はあなたの生年月日から3ヶ月間の天体の動きに目を移してみてください。チェックするポイントは、天体が順行から逆行、あるいは逆行から順行に戻った時、新月と満月、それから星座の移動です。
アスペクト等詳しいことはわからずとも、「この3ヶ月の間に、金星と土星が逆行に入るな」というような、明確なポイントが見えてきます。それがすなわち、あなたの人生のターニング・ポイントでもあるのです。

ご自分のチャートに飽きたら、あなたの身近な人を見るでもよし、気楽にやってください。
占星術は基本を習得したとしても、それは占星術で得られる知識全体の1/100ですらありません。
そこから長い時間をかけて、星の表示と自分や、あるいは自分以外の誰かの人生を照らし合わせるという経験を通してでしか、教科書に書いてあることの本当の意味を体得することはできません。

ぜひあなたも、ご自分を大事にしながら、星との対話を楽しんでください。